美濃焼の産地として知られる岐阜県多治見で誕生したテーブルウエアブランド「Rimout」。TALK代表の梶原典男さんに、ぬくもりの伝わる器づくりへの思いを伺いました。
TALKとは
1979年に設立した当時の日本は階層社会でしたが、“風通しのよい会社、会話のある会社”を目指すため、社名を「TALK(トーク)」に。社員同士が積極的に会話しながら、新しいモノづくりへの意識を持ち続ける会社です。
梶原さんは、元々メガネなどを扱う大手光学機器・ガラスメーカーに勤務。どのような経緯で「TALK」に携わったのでしょうか。
「TALK」は、先代が50歳の頃に脱サラをして立ち上げた会社なのです。主にインテリア卸や製造、輸出入を行う会社ですが、私も学生の頃からインテリア雑貨やデザインに興味があり、海外へ赴いては、現地の作品に触れていました。前職で勤めていた大手光学機器・ガラスメーカーでは陶器事業部でモノづくりをイチから習い、職人さんとの関係を築ける部門にいたことで、会社を継ぐための基礎を学びました。
我々が扱う「Rimout(リモウト)」は、“枠にとらわれないモノづくり”のために生まれたブランド。20年近く続く代表作「NOISETTE(ノワゼット)」シリーズをはじめとした器たちは、すべて職人の手仕事で生まれており、ふたつとして同じものはありません。
この器に心のこもった料理を盛り付けてもらい、心地よい食事の時間を過ごしてもらいたいなと思っています。
手作業で1本ずつ表面を掻き落とし、
趣きを出す「RAYURE」
「RAYURE(レイユール)」は、フランス語で、「削る」という意味。濃色の釉薬と、職人の手で1本1本刻まれた線が特徴の器です。どこか力強さを感じるこのシリーズは、パンや野菜などの朝食によく合います。
この細い線は、釉薬に浸したプレートを乾燥した後に行う、曲がり刃を使った掻き落としという工程で刻まれます。まず、当たり線の入ったゴム判を素地のプレートに押し、そのラインに沿って曲がり刃で削ります。この時の角度・深さ・太さが、仕上がりに大きく左右してしまうんです。絶妙な力加減の掻き落としは職人がなせる技ですが、開発時は熱を加えたことで釉薬が溝に戻ってきてしまったり、削りすぎて下の素地が見えてしまったりなど、失敗を繰り返しました。
窯焼きには1,250度の熱で18時間、火を消してから自然冷却で15時間ほどかかるため、例え失敗していたとしてもわかるのは約1日半後。仕上げてみないとわかりません。結局、開発するのに1年を要しました。
その開発を続けた結果、できあがった「RAYURE」はかわいい子どものよう。職人の技を込めた器に、思いを込めた料理を乗せたら、素敵なマッチングが生まれます。
まるで水彩絵具をにじませたような風合いの
「Aquarelle」
本来、素地にコーティングする釉薬はひとつだけ。しかし、この「Aquarelle(アクアレール)」は、2色の釉薬をかけ合わせ、水彩絵具をにじませたような、優しい色合いの器にしています。
釉薬は温度調整が非常にデリケート。釉薬が混ざり合うことで化学反応を起こしてしまうため、開発当初の不良率は80%と、とても難易度の高いデザインでした。それでも、職人たちが諦めずに技術を磨いてくれて、1年かけてやっと完成した器になります。
職人の思いを込めた
「TALK」の器は、
料理とセットで完成!
会話を楽しみながら、
食事の時間を楽しんでください。
食事の時間
よく、器は料理の脇役といいますが、私にとっては両方がセットで“料理”だと思っているんですよね。みなさんが手間をかけて料理されるのと同じように、職人も時間をかけて丁寧に器づくりをしています。みなさんの思いを込めた料理を乗せて、ぜひ食卓にぬくもりを与えてもらえたらうれしいです。
職人とともに
「Rimout」の器の製作をお願いしているのは、竹堂園の代表 島倉淳さんです。30年以来の付き合いになる島倉さんは、本当に研究熱心で、新しいモノづくりに対してまず断りません。
「100年近く続く会社で、焼き物においては、そう簡単にできないとは言いたくないのです(島倉さん)」。
基礎から研究をやり直して追求し、作品によっては3年ほど開発に費やして断念したことは幾度もあります。ただ、他にはできない職人の技術を活かしてみたい、みんながやれないことをやってみたいという挑戦意欲は絶やしません。しかし、メーカー側の押し付けではなく、使ってくださる方にとって喜んでいただける、温かみを感じられる器づくりをしていきたいと思っています。