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心が豊かになるインタビュー 小山薫堂さん 心が豊かになるインタビュー 小山薫堂さん

3650日とすこし。暮らしにそっと寄り添いながら、より良い“大切な日常(DAYS)”をお届けしたい。ノーリツデイズの心が豊かになるインタビューにご登場いただくのは、前回に続き、小山薫堂さんです。 “湯道は作法にあらず、湯に向かう姿勢なり”を提唱する湯道の家元であり、「湯道百選」を連載している小山薫堂さんは、自他共に認める大のお風呂好き!ご自身が仕掛け人となる新しいお風呂プロジェクトや、忘れられない思い出のお風呂、さらには湯道の教えから学ぶ幸せへの“気づき”について、盛りだくさんでお届けします。

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湯道発祥の地に、核となるお風呂を制作

  • 昨年ついに「一般社団法人 湯道文化振興会」として活動をスタート。お風呂文化を日本に、世界に向けて発信する想いとは?
  • 「今までの湯道は、僕個人の活動でしたが、それでも湯道をやりたいと賛同してくださる方がいました。それが湯道文化振興会という組織になったことで、これまで以上に広く展開できると思います。例えば、5年前に湯道を拓いた京都のお寺に、湯道の核となる風呂を作るプロジェクトが進行中です。湯道文化振興会を母体に、いろいろな方を巻き込み、文化的な展開をしていきたいですね。」
  • 湯道温心は、三重県の老舗タオルブランド「おぼろタオル」とコラボしたオリジナルタオルにも入っている湯道の真髄となる言葉。お寺でのお風呂体験はもちろん、この先どんなお風呂を発信してくれるのか楽しみが増えそうです。
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200年先も、人々の視点を変える装置であってほしい

  • お風呂文化に歴史があるように、湯道の心を伝えていきたい。これから先の未来、小山薫堂さんにとって、湯道はどんな存在であってほしいと感じているのでしょうか。湯道の教えについて語っていただきました。
  • 「幸福を創造するきっかけは、自分がどう思うかという視点が大切。湯道には、人々の視点を変える装置であってほしいですね。例えば、今日の昼ごはんがコンビニだとガッカリする人がいたとします。でも、美味しいと思える人のほうが幸せですよね。自分の視点をどこに置くかで、その価値は変わるものです。厳しい修行の最中にお坊さんが食べる釜炊きごはんだって、苦しい修行の後に究極の釜炊きごはんを食べることをありがたいと思えば、幸せを感じられる・・・そうやって視点を上手く変換させると、当たり前のように入るお風呂が、実は奇跡的に幸福なものだと気づくんです。」
  • そこに価値が生まれ、幸せと感じるか。湯道を通じて、視点を変換するきっかけになれたらいいと笑顔で話してくれました。
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「小山薫堂のつながる技術」から学ぶ“気づき”とは?

  • 幸せに生きるためのヒントを教えてくださった小山薫堂さんは、本も執筆されています。ノーリツデイズでも販売されている書籍「小山薫堂のつながる技術」より、この本を読まれる方にぜひ注目してほしいポイントを1つ選んでいただきました。
  • 「『幸せとは探すものではない、気づくものである。』これですね!求めるばかりでなく、周りを見れば、たくさんの幸せがあるはずです。だから『気づき』はすごく大切。ほしいものを手に入れなければ幸福と感じないことを、なるべく捨てていくというか。自分の周りをあらためて見直すことって、とても大事だなと思います。」
  • 時代の最先端で活躍する先駆者でありながら、ゆったり穏やかな空気を身に纏う小山薫堂さん。その人柄を表す心の在り方も語ってくれました。
  • 「北大路魯山人の言葉にある坐辺師友(ざへんしゆう)、これは自分の周りが師であり友である、自分の周りにある価値に気づきなさいという意味があります。良いものに囲まれることが人を良くするという意味で魯山人は使われているようですが、僕の場合は少し違っていて。自分の周りにあるものを先生や友人と考えることで、いろいろな価値がそこに生まれてくる、そう解釈しています。」
  • お風呂のようにポカポカ温かい、小山薫堂さんの人を想う気持ちが「幸せ」という気づきに通じているようです。
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マンネリを打破するなら、神さまにフェイントをかける

  • 長い人生、毎日同じことを繰り返しているとマンネリになるのは、多かれ少なかれ誰もが経験すること。そしてそれは、ひらめきの天才・小山薫堂さんも同じ。神様にフェイントをかけてマンネリを打破するという、マンネリからの脱出方法を教えていただきました。
  • 「同じことを繰り返すと、安心する方向に向かってマンネリになるのは、僕にもあります。そんなときは、神さまにフェイントをかけてみてください。いつも自分を見ている神様がハッとしてしまうこと・・・言い換えれば、普段なら絶対にしないことを“あえて”やってみる。その摩擦から今までと違う新しい流れが生まれます。例えばエレベーターに乗ったとき、全く知らない人に「今日は天気が良くて気持ちいいですね」と自分から声をかけるとか。いつもなら絶対に頼まない苦手なものを食べてみるとか。マンネリを感じたときは、こうやって神様にフェイントをかけるのが好きですね。」
  • マンネリとは、いつも通りを繰り返す安心領域から抜け出せない状況です。大それたことでなくてもいい、小さなことでも神様がハッとするようなチャレンジが、新しい流れが生まれるきっかけとなり、チャンスに繋がる。こうした感覚が「つながる技術」の土台となっているようです。
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一期一会に感謝する、お風呂で繋がる幸せとは

  • 皆さんにとって、最上級の幸せとは何でしょうか?「お風呂に浸かることが一番の幸せです」と答えてくれた小山薫堂さんが体験された、思い出の銭湯とは?
  • 「銭湯に入ったとき。たまたま隣にいたおじいちゃんが幸せそうな顔で湯船に浸かっているのを見ると、僕も幸せな気分になります。その中でも思い出に残っているのが、湯道百選でも紹介した京都にある柳湯。兄弟で切り盛りしている古い銭湯なのですが、お風呂から上がった後に脱衣所で宴会が始まるんです(笑)椅子をテーブルにして、近所で買ってきた缶ビールを並べて。女湯にいた常連さんも加わって皆で乾杯するという。最近になって、お兄さんが亡くなってしまい、今は閉めている状態だと聞いています。今まさに廃業の危機に瀕しているので、何かできることがあればと思いますね。」
  • お酒を飲み交わしながら、銭湯で出会った人達と語り合う・・・こんな銭湯があったのか!と思うような、脱衣所で缶ビールを片手に乾杯している様子は、「湯道百選」のコラムでご覧いただけます。興味のある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

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湯道の家元として、譲れないプライド

  • 温泉や銭湯の思い出の中には、湯道家元のプライドをかけたお風呂体験もあったのだとか。穏やかな雰囲気を持つ小山薫堂さんですが、お風呂好きとして絶対に譲れない負けん気の強さも隠し持っていました。
  • 「湯道百選の取材で訪れた那須温泉 鹿の湯には、湯道の家元として行かねばならない!と思うお風呂がありましたね。ここには41、42、43、44、46、48度とお湯の温度が異なる小さめの浴槽が6つあるのですが、もちろん最初は41度に入り、気持ちいいなと思うわけですよ。何気なく周りを見たら、46度と48度に入っている方が『湯道家元のくせに、ぬるま湯に浸かるのかよ』と僕をせせら笑うように見ているような気がして。僕の勝手な思い込みですけどね、湯道の家元としては行かねばと44度で体を慣らしてから46度に入り、肩まで浸かりました。そしたら『なかなかやるな』と周りの風向きも変わってきて・・・。周りから注目されているような気もするし、ここまできたら48度も行くしかないぞ!と意気込んで入ったら、熱すぎて5秒で飛び出しました(笑)」
  • 普通の人なら遠慮したくなる熱湯も、強い意志で48度のお風呂に挑戦された小山薫堂さん。きっとその場にいた方達にも、お風呂への執念が伝わったのではないでしょうか。

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“DAYS”これからの日常について

  • これまでも、これからも。小山薫堂さんが目指す、理想の日常とは何か質問してみると「今とは全く違う暮らしをしてみたいです。」と一言。ちょっと考えながら、今のご自身が望む日常について語ってくれました。
  • 「今の僕は、作家やコンサルティング、イベント、テレビ番組、広告・・・と、1時間毎に全く違う思考回路を使い分けながら仕事をします。それによって生まれるアイデアもたくさんありますけど、ひとつの事だけを、じっくり考える暮らしがしてみたいですね。もしかしたら詩人になりたいかもしれない(笑)」
  • 実は高校生のときに思い描いていた夢が、詩人だったという小山薫堂さん。人の魂を震わせる詩を書きたいという背景には、幸せという気づきを与えたいという思いがありました。湯道をテーマにした詩を小山薫堂さんが書く、そんな未来がいつか実現されるかもしれません。

小山薫堂

小山薫堂

小山薫堂

小山薫堂
放送作家。脚本家。京都芸術大学副学長。京都の料亭「下鴨茶寮」主人。1964年熊本県天草市生まれ。日本大学芸術学部放送学科在籍中に放送作家としての活動を開始。「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」など斬新なテレビ番組を数多く企画。脚本を担当した映画「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。執筆活動の他、地域・企業のプロジェクトアドバイザーなどを務める。熊本県のPRキャラクター「くまモン」の生みの親でもある。 2015年より、現代に生きる日本人が日常の習慣として疑わない「入浴」行為を突き詰め、日本文化へと昇華させるべく「湯道」を提唱。2020年10月「一般社団法人湯道文化振興会」を創設した。現在、雑誌PenおよびWebsiteにて、湯道百選を連載中。

湯道百選

https://yu-do100.jp/